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多くの大都市圏では未だに価格が上昇傾向

全米の多くの大都市圏では、そのペースはスローダウンしましたが、不動産価格は未だに上昇しています。全米リアルター協会(NAR)は、「2018年第4四半期の全米の戸建て既存住宅の中間価格は257,600ドルで、前年同月との比較で4%上昇した」と報告しました。

カリフォルニア州を中心とした米国の西部地区では、既存住宅の販売戸数は前年同月比で6.5%の減少で、前年同時期との比較では13.9%ダウンしましたが、中間価格は383,000ドルで1.8%上昇しました。

全米の92%に当たる178の都市圏では、戸建ての既存住宅価格は上昇しており、その中でも14の都市圏では二桁成長を示しています。二桁成長の都市は、昨年の18地域からは減少傾向にあります。

「住宅価格は多くの地域で上昇しているが、在庫数の増加によってそのペースは落ち着いてきたため、全体的にはスローペースの健康的な市場になっている」と、NARのチーフエコノミスト、Dr.ローレンス・ユン氏は述べています。

既存住宅、つまり戸建てやコンドミニアムなどを含めた総数は、第4四半期には518万戸レベルとなり、前年比では7.4%減少しました。全米では全体で155万戸の販売可能な住宅在庫があり、これは一昨年よりも6.2%増加しています。

ただ、多くの西海岸の都市では、依然として販売可能な物件数に限りがあるとユン氏は述べ、「米国西部では、この6年で不動産価格は倍になり、リセッション以降最も緩やかな価格上昇になっているため、バイヤーは買い控えをしている状況下にある」と指摘しています。

また、「全米で購入可能な住宅価格が維持されていることが、住宅市場の健康的な発展を支えている」と、前述のユン氏は続けています。

「それを継続するためには、さらなる一時取得者層用の住宅建設が必要となる」とユン氏は述べています。住宅着工件数は、歴史的に見ても平均レベルよりもさらに低く、過去10年間でわずか960万戸しか供給されておらず、全米の人口増加に追いつくには、1,500から1,600万戸が必要になります。

2018年第4四半期において、全米で最も住宅価格の高い地域は、
1.サンノゼーサニーヴェイルーサンタクララ(San Jose-Sunnyvale-Santa Clara) 地域、カリフォルニア州:戸建て中間価格は1,250,000ドル
2.サンフランシスコーオークランドーヘイワード (San Francisco-Oakland-Hayward) 地域、カリフォルニア州:同952,400ドル
3.ホノルル市、ハワイ州:同812,900ドル
4.アナハイムーサンタアナーアーヴァイン(Anaheim-Santa Ana-Irvine) 地域、カリフォルニア州:同799,000ドル
5.サンディエゴーカールスバッド (San Diego-Carlsbad) 地域、カリフォルニア州:同626,000ドル

となっており、最も高額な地域はカリフォルニア州とハワイ州の太平洋側に集まっています。

反対に、全米で最も住宅の買いやすい地域は、
1.デカトゥー (Decatur)、イリノイ州:戸建て中間価格は89,300ドル
2.ヤングスタウンーウォレンーボードマン (Youngstown-Warren-Boardman)地域、オハイオ州:同97,200ドル
3.カンバーランド (Cumberland)、メリーランド州:同109,100ドル
4.エルマイラ (Elmira)、ニューヨーク州:同111,400ドル
5.エリー (Erie)、ペンシルバニア州:同113,300ドル

となっており、価格の低い地域は中西部を中心に東部地域に集中しています。

これを見ても分かるように、全米では住宅価格の差は天と地ほどの開きがあります。

<Source: REALTOR.Mag>

米国経済はスローダウン、住宅市場の見通しは小休止状態

ロイターが行った調査で、今年の全米の住宅価格の動向は、戸建て住宅の不足や一時のモーゲージ利率の上昇などの要因が、価格が高騰している市場をさらに圧迫しているため、この5〜6年間で最もスローペースの上昇になると予測されていることが明らかになりました。

このロイターの調査は、全米の40名ほどのエコノミストや住宅アナリストたちの回答をまとめたものです。米国の中央銀行にあたるFRB (Federal Reserve Board:連邦準備制度理事会) の利率ガイドラインの変更により、今年の利上げは無期限の延長、あるいは利上げなしとしたことによるものだとしています(FRBは昨年後半に、高騰している住宅市場の価格を抑える目的で拙速な利上げを繰り返し、それが価格の高騰を抑えるのではなく、逆に市場をスローダウンさせたことによる反省から)。

これにより、戦後最も長い間成長し続け米国経済に貢献し、米国経済の牽引車の1つであった住宅産業は、もしかすると、今年は米国経済の足を引っ張ることになるかもしれません。

調査によると、今年は米国の住宅価格は4%上昇し、来年以降の数年は年間3%成長するだろうと予測しています。

全米リアルター協会(NAR)のチーフエコノミスト、Dr. ローレンス・ユン氏は、「米国の住宅市場はこの10年間、価格の上昇が続き、それは所得収入の伸びを上回り、その結果が住宅購買力の低下へと繋がっており、住宅を購入できない状況をつくっている」と語り、「これ以上住宅価格は上がらないというポイントまで来ており、今後は極めて穏やかな上昇傾向になるだろう」と続けています。

〝このスローダウン傾向にストップをかけ、需要を喚起する方法は?〟との質問には、25名のうち15名がFRBによる利上げの凍結を1つの手段として挙げています。残りの1/3は、さらなるインフラへの投資や税金の控除などと答えています。

前述のように、FRBが利上げの方針を変更したことにより、昨年後半に7年半ぶりに記録した利率から一転して、今後数年は年利5%を超えないのではないかと予測されています。1月に開催されたFRBの全体会議とそのレポートをまとめた「ベージュブック」と呼ばれる白書にも、今後利上げをするには「忍耐」が必要になると記載されています。

ただ、このFRBによる利率凍結という突然の方針変更が、住宅市場に好材料をもたらすかどうかは疑問です。キャピタルエコノミクス社のエコノミスト、マシュー・ポイントン氏は、「それほどの影響を及ぼさないだろう。なぜなら、利率が下がるということは、景気が後退していることを意味するのだから」と述べています。

10年ほど前には、リセッションで全米の住宅価格が1/3以上も下落しましたが、この10年間でそのロスをリカバーしています。

大恐慌後のほぼ10年間、米国経済は住宅市場に活況をもたらしてきましたが、しばらく前から住宅のビルダー、建設業者は需要にマッチした戸数、特に一時取得者層向けの戸建て住宅を供給していません。

前述のユン氏は、「全体的に見れば、建設業者は住宅を供給しているが、必要とされる一時取得者層や買い換え層を中心とするクラスへの住宅供給が欠けており、それが在庫数 (inventory:販売可能な物件数) の不足をもたらしている。この在庫数不足が、一時取得者層がマイホームを購入できない状況なのである」と述べています。

既存住宅市場は全米の住宅販売の約90%を占めており、今年は年間530万戸の販売ペースと予想されています。これは、前回の住宅ブームの2005年に記録した700万戸と比較すると大幅な減少に見えますが、年間戸数のバロメーターとしては、500万戸がベンチマークとなっています。

住宅市場が急激に回復することは、S&Pケース・シラー(米国住宅価格指数)の全米20都市のインデックスにおいて、過去8ヶ月平均価格が下がっていることなど、最近の指標を見るかぎり考えられません。

「利率の上昇によって、米国の住宅市場はスローダウンしており、それ以前の価格の高騰が住宅購買力の減少をもたらした」とBMOキャピタルマーケットのシニアエコノミスト、サル・グアティエリ氏は述べ、「もしかすると、最近の利率の凍結により、直近の販売戸数は増加するかもしれないが、長い目で見ると、米国の経済は緩やかな減速傾向にあることから、穏やかな購買力のある市場に向かっていくのではないだろうか」と締めくくっています。

<Source: REUTERS>

エクイティーリッチの世帯は全米で1,450万戸に

既存住宅価格の上昇が、全米でホームオーナーの資産を増やしています。不動産リサーチ会社の大手、エイトム・データリサーチ (ATTOM Data Research) 社は、いわゆる「エクイティーリッチ (equity rich)」と呼ばれる世帯は、この第3四半期で、全米の既存住宅でモーゲージや住宅ローンを取得している総数の1/4以上の25.7%、世帯数にして約1,450万戸となっており、過去最高の数字であると発表しました。

全米の約65%の物件が、ローンを取得している世帯です。「エクイティーリッチ」とは、ローン残高の比率が、物件価値の50%かそれ以下の物件のことを意味しています。 ちなみに昨年同時期の比率は26.4%で、433,000世帯増えていることになります。

「マイホームに長く住めば住むほど、現在のように価格が停滞している状況にあっても、家の資産価値は上昇する傾向にある」と上級副社長のダレン・ブロムクイスト氏は述べており、「西海岸の都市とニューヨークに住むホームオーナーたちが最もその恩恵を受けている反面、ラストベルト(石炭や鉄鉱を中心とした産業のあった米国中西部から大西洋岸中部地域) と呼ばれる地域と、ミシシッピーヴァレー (ミシシッピー川流域の南部諸州) と呼ばれる2つの地域では、ほかの地域における価格の上昇とは相反して、アンダーウォーター (underwater:ローン残高が物件の価値を上回っているケースで、ローン残高が物件価格を少なくとも25%上回っている状態を意味する) の物件の比率が未だに多い」としています。

特に、ルイジアナ州 (Louisiana:物件全体の21.3%)、ミシシッピー州 (Mississippi:同6.2%) 、アイオワ州 (Iowa:同15.5%) 、アーカンソー州 (Arkansas:同15.3%) 、イリノイ州 (Illinois:同15.1%) でアンダーウォーターの比率が高くなっています。

レポートによると、全米の98の都市や地域がこの状況にあり、ルイジアナ州のバトンルージュ(Baton Rouge:20.7%) 、オハイオ州のヤングスタウン (Youngstown:18.7%) 、ルイジアナ州のニューオリンズ (New Orleans:18.6%) 、ペンシルヴァニア州のスクラトン (Scranton:18.3%) 、オハイオ州のトレド (Toledo:17.7%) がワースト5になっています。

全米の多くの地域ではエクイティーが増えていますが、前述の地域ではアンダーウォーターとなっているところも多く、リセッション後10年という歳月を経過しているにも関わらず、全米では未だに物件価格が上昇していない地域も490万世帯ほどあります。この比率は、ローンを取得している世帯総数の8.8%を占めており、今年の第2四半期の9.3%からは減少傾向にあります。

一方、全米の中で最もエクイティーリッチとなっている州は、カリフォルニア州 (California:42.5%) 、ハワイ州 (Hawaii:39.4%) 、ワシントン州 (Washington:35.3%) 、ニューヨーク州 (New York:34.9%) とオレゴン州 (Oregon:33.6%) となっており、東海岸のニューヨーク州を除いてすべて太平洋側の諸州となっています。

今年の第3四半期で最もエクイティーリッチの比率が高かった都市のトップ5

1. サンノゼ (San Jose, CA):73.9%
2. サンフランシスコ (San Francisco, CA):59.8%
3. ロサンゼルス (Los Angeles, CA):47.6%
4. シアトル (Seattle, WA):41.2%
5. ホノルル (Honolulu, HI):40.8%

<Source: ATTOM Data Research>

11月のペンディングホームセールス・インデックスは0.7%減少

全米リアルター協会(NAR)は、全米の既存住宅販売の先行指数を表すペンディングホームセールス・インデックス(PHSI)の昨年11月の状況について、米国北東部と西部で若干上昇したと発表しました。

PHSIは契約が成約した状況を表す指数で、全米では前月より0.7%減少して101.4ポイントで、10月は102.1でした。2018年通年では11ヶ月連続して減少しており、昨年対比では7.7%減少しました。

NARのチーフエコノミスト、Dr.ローレンス・ユン氏によると、現在のPHSIの状況は市場動向を正確に反映していないとして、「現在の成約指数は、モーゲージ(住宅ローン)利率などの上昇により、一時的にバイヤーがサイドラインに退いた状況で様子を見ているもの」と述べています。

さらにユン氏は、「このPHSI指数は2014年以降最低値を示してはいるが、大げさにリセッションでは? と疑うような理由は現時点では何もない」として、長期的にはまだまだ成長する余地があると指摘しています。

全米の4地区すべてにおいて、昨年同月対比では減少しており、「西地区では若干伸びている地域もあるが、全体的には適正ではない状況により、大きな減少を示している」とユン氏は述べています。

続けてユン氏は、「適正ではない状況とは、西地区などでは住宅価格の継続した上昇、販売可能な物件数 (在庫数) の少なさ、FRB (米連邦準備制度理事会) による短期間での度重なる利率の上昇などが重なったことによる」としています。また、「土地の価格が上がり、地方自治体ではゾーニング(空間の用途別利用)などの規制や許認可の煩雑さのため、デベロッパーが思うように新規着工できずにいることなどがあるため、地方自治体ではそれらの緩和、簡素化などで物件数を増やしていくような工夫が必要だろう。そうしなければ、マイホーム購入ができない取得者層などは、住宅価格が安い場所へ移り住むようなことも出てくるだろう」と指摘しています。

さらに、現在の連邦政府のシャットダウン(閉鎖)による影響は、住宅市場にも出始めています。大きな理由の1つは、洪水や水害などの保険 (flood insurance) が閉鎖中には取得できないためで、「このまま閉鎖が続けば、毎月4万戸の住宅販売の機会が失われることになるだけでなく、景気も鈍化していく」と述べています。

ユン氏によると、今後の既存住宅市場は長期に渡り明るい兆候が見られるとして、「2018年の年間販売戸数は530万戸レベルに落ち着き、住宅ブーム初年度の2001年と状況が似ている。しかし大きな違いとして、前回よりも雇用が1,700万人も増えており、住宅市場はまだ平均以下で、伸びしろは大きい」と述べています。

PHSIは、前回の住宅ブーム初年度の2001年の販売状況を100として、その成約数を指数化して表しているインデックスです。この時期の販売数は500万戸から550万戸レベルで、これが米国の健全な市場レベルとなっています。

<Source: NAR>

年間所得117,000ドルでも低所得とみなされる都市は?

米国住宅都市開発省 (HUD:U.S. Department of Housing and Urban Development) は、毎年、HUDが主導する低所得者層向けの住宅プログラムのガイドラインを発表しています。その中で目に留まったのは、カリフォルニア州のサンフランシスコ(San Francisco)でした。HUDでは、サンフランシスコの一家(夫婦と子供二人)の年間収入である117,400ドルを、低所得者層と位置付けたのです。

HUDは、全米の各都市でハウジング・アシスタンス (housing assistance)、つまり官主導の住宅などへの入居を優先的に受けられる年収の上限設定 (income limits) を主導しています。それは、各地域の一家の年間中間収入や住宅価格などを加味して計算しています。その指数の80%のレベルであれば「低所得 (low income)」、50%のレベルであれば「超低所得 (very low income)」、30%にも満たない場合は「極貧 (extremely low income)」とみなされます。

サンフランシスコ(11km四方の都市で、東京の山手線の中にすっぽり入る大きさ)では、前述の一家で年間所得が44,000ドル以下の場合は「極貧」、73,300ドルでも「超低所得」、117,400ドルの所得があっても「低所得」とみなされます。

住宅価格の高騰がサンフランシスコの物価を押し上げており、6桁の年間所得でさえ、低所得とみなされている現実があります。サンフランシスコの住宅の中間価格は、今年の4月には947,500ドルになり、2018年の第一四半期は、賃貸の中間価格も月額3,300ドルになりました。これは、前述の住宅価格では、サンフランシスコの住民の15%しか購入できない計算になります。

サンフランシスコでの年収が117,400ドルだとしても、すぐに連邦政府レベルの援助が受けられるわけではありません。「全米では、その指数が18,000ドルになっている」とHUDの報道官は弁明していますが、「ある一定の中間所得者層(一般的には年収が6桁のレベル)は受けられるだろう」と述べています。

ULI(Urban Land Institute:アーバンランド研究所)のフェローであるスーザン・ポプキン氏は、「学校の先生、消防士、あるいはレストランで働く人たちは、郊外に住んでいるため相当な時間を通勤に費やしているので、その必要性はある」と述べています。

<Source: CNN, Realtor.Mag>