学生ローンの返済がミレニアル世代のマイホーム購入を 7年遅らせている

マイホームを購入するのに最も適している世代であるにも関わらず、ミレニアル世代 (Millennial Generation:1980年代から2000年前後に生まれた世代)のほとんどが学生ローンの返済をしているためにマイホームを購入できず、ローンのために7年間も購入を据え置きしていることが判明しました。

これは、全米リアルター協会(NAR:National Association of Realtors)と非営利団体である米国学生援助協会 (ASA:American Student Assistance) による、ミレニアル世代の学生ローン負債 (Student Loan Debt) に関する共同調査で分かったことです。さらに調査で判明したことは、学生ローンの負債が、ミレニアル世代をリタイアメント、キャリア、継続教育、結婚や子供を持つことなど、自分の将来や金銭的な決定を下すことを躊躇させている要因だと分かりました。

NARとASAによる共同調査では、ミレニアル世代の回答者の20%はマイホームを所有しており、彼らの典型的なローン負債額は41,200ドルであり、彼らの年収38,800ドルを上回っています。回答者の79%は4年間の大学教育を受けるために学生ローンを組み、51%は今でもローン残高が40,000ドルを超えています。

マイホームを所有していない80%のミレニアル世代のうちの83%は、「学生ローンの負債がマイホームの購入を遅らせている」と思っています。学生ローンの負債の支払いのためにマイホームの購入が遅れる中間値は7年と出ており、マイホームを所有していない世代全体の84%は、「最低でも3年は遅れる」と答えています。

「ミレニアル世代の多くが学士を取得するために何万ドルも借りなければならなかった事実は、この世代のマイホームの購入に金銭的かつ精神的な影響を与えており、マイホームの選択肢や人生における大きな決定に対してまで影響を及ぼしている」とNARのチーフエコノミスト、Dr. ローレンス・ユン氏は述べ、「一時取得者層への既存住宅の販売はここ数年予想を大きく下回っており、この調査結果のように学生ローンの負債がその最たるものである。年配のミレニアル世代の多くや年収の高いグループでも、負債のために十分なダウンペイメント (Down Payment:頭金) を用意できない、金銭的に購入する余裕が持てないなどで購入が遅れた」と続けています。

ユン氏は、「住宅市場のサイクルは、1.4兆ドルにも及ぶ学生ローンの負債を米国の家庭が抱えていることに影響を受けている。それだけでなく、一時取得者層のマーケットの需要が弱いこと、ミレニアル世代でマイホームを所有している家庭の1/4はローンの負債があるために家を売却して買い替えることができない、あるいは買い替えやアップグレードをする頭金がつくれない、負債が将来の住宅ローン(Mortgage:モーゲージ)を判断する彼らのクレジットスコア(個人の信用偏差値)に影響を与えている」としています。

またユン氏は、「ミレニアル世代のホームオーナーのうち、学生ローンの負債で自宅の買い替えができない世帯はそこに住み着くことになり、米国で通常行われている買い替えのサイクルを遅らせるだけでなく、住宅の供給にも支障をきたし、ひいてはマイホームを購入しようとする一時取得者層にも影響を及ぼしている」と述べています。

この調査では、学生ローンの負債がミレニアル世代のマイホームの購入を遅らせているだけでなく、彼らの人生の選択肢や生活に関わる決定まで遅らせていること——すなわち経済や彼らの幸福感に影響を与えていることが判明しています。回答者の86%は、「自分のキャリアを維持するためにアルバイトをしたり、好きではない仕事を続けたり、あるいは専門外の仕事に就く」などの犠牲を払っています。さらに、半分以上が学位などの教育や結婚を遅らせており、41%は「結婚したいが、負債のために躊躇している」と答えています。

ユン氏はさらに深刻な点として、「この世代は学生ローンの支払いのために老後の貯蓄を後回しにせざるを得ず、61%は未だに貯蓄を始められず、32%は貯蓄を始めたが満足できるものではない」としています。

また、「将来のための貯蓄ができないだけでなく、マイホームを購入するという今後の資産形成の基礎となる部分にも関与できないことは、この世代に長期にわたるマイナス効果をもたらすだろう。そして、学生ローンを借りなかった者だけがマイホームを購入できて貯蓄ができるというシナリオは、理想的な姿ではなく、経済を脆弱にさせ、持つ者と持たざる者という不公平さを増大させる結果にもなる」と述べています。

学生ローンの支払いなど、多くの金銭的なプレッシャーを抱えるこの世代は、大学へ行くために借りたローンがどんなものなのか全体像を把握できないまま、卒業して現在を迎えているようです。授業料や経費、住宅費などの全体像を理解しているのは5人に1人しかいないことがアンケート調査で分かりました。

「学生ローンは、米国で大学へ通う学生の大半にとって現実的な問題である。そして、教育にかかるコストが、マイホームを持つというアメリカン・ドリームをこのように若者の世代を通じて妨げるような性格のものであってはならない」とASAの社長兼CEOであるジーン・エディー女史は述べ、「この調査結果は、今後の学生教育において学生の負債レベルを軽減する必要性を確認できたことや、現在返済に追われている人たちに返済可能なプランを手助けして、将来の夢を後回しにしないようにアシストすることができるだろう」としています。

学生ローンは、米国の高等教育で大きな役割を果たしています。毎年約2,000万人の学生が大学に入学し、その60%に当たる1,200万人が毎年、授業料やコストをカバーするために借入れをしています。

近年ではその額も上昇し、借入れ総額は全米で1兆3,000億ドルにも上り、米国のGDPの5%を占めるまでに至っています。これはモーゲージ、つまり住宅ローンに次ぐ大きさで、クレジットカードや自動車ローンの債務額よりも大きく、社会的な問題にも発展しています。

ここでいう学生ローンは、奨学金(Scholarships)とは全く違う性格のものです。米国の奨学金制度は、学業あるいはスポーツ、芸術において優秀な生徒や学生に対して、修学を促すことを目的にした返済義務が全くない給付奨学金です。日本では、本来は学生ローンに当たるものも、奨学金という名目や定義で低金利の貸出しをしていて紛らわしく、誤解を生じます。

<Source: NAR>